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『国有林森林鉄道全データ(東北編)』の功罪(読書感想文です)


久々の「おぶろぐ」更新ですが、今回は先月28日に発売となったばかりの話題?の新刊、『近代化遺産 国有林森林鉄道全データ(東北編)』について、オブローダー視点から感想を書かせてもらいたいと思います。

まずはじめに、秋田から森林鉄道が全廃されてからちょうど40年という年に、このような「本格的」な「林鉄専門書」が秋田県の出版社(新聞社)から発売となったことは、黙っていれば忘れ去られ行く定めにある森林鉄道の世界において、大変に意義深い事だと思います。
これまで「日本最初の森林鉄道=津軽森林鉄道」や「日本(本州)最後の森林鉄道=木曾森林鉄道」の影に隠れて、決してメジャーとは言えなかった秋田県の森林鉄道(県別の林鉄総延長では青森と並んで日本一)を大々的に取り上げる本が出たことは、個人的にも大変嬉しいことで、私ももちろん即日購入して早くもページが“しおれる”くらい読んでいます(笑)。

これがどういう本かと簡単に申しますと、タイトルに『全データ』と書いてあります通り、「どこにいつ、どういう林鉄があったか」という記録に焦点を当てた「データ集」といえるものです。


(↑クリックで拡大)            (↑クリックで拡大)

この本のページの大半を占めているのは、左の写真で示した「各路線の変遷データ」と、それに附属する右の写真のような「地図」です。

前者が本書の根幹であり、これは各営林局が保管していた年度ごとの「土木台帳」を集計したという極めて緻密なものです。私もこの資料を見て、初めてその存在を知った路線が数多くあります。これまでも林鉄の全路線データとして活用されていた『全国森林鉄道 JTBキャンブックス』の場合は、昭和35年時点のデータをもとにしているため、その時点で存在しなかった路線が記載されていないというデメリットがありましたが、本書は明治末から昭和まで、全ての期間の路線が網羅されています。また、各路線の年度ごとの延伸・廃止が詳細に記述されていることにも非常に大きな価値があります。実際に探索をする上で大いに頼りになるはずです。

ただし、本書が「東北」にある全ての森林鉄道を網羅しているわけではないことは注意を要する点です。タイトルにもあるとおり、本書は「国有林森林鉄道」を対象としていますので、民間で敷設した路線は収録されていませんし、途中で民間に払い下げられた路線は、その時点で廃止された扱いです。もっとも、東北地方は国有林野率が全国的に見ても高く、特に青森と秋田は95%前後の高率であったため、私が把握している限りで本書に収録されていない林鉄というのは、青森県鰺ヶ沢の赤石川沿いの路線や、(←この路線は鰺ヶ沢営林署の歴とした林鉄だったが、本書の記載漏れである〔原因は不明〕との信頼出来る情報を得ましたので、記述を修正します 2012/7/23訂正)秋田県の西目駅から延びていた路線など、かなり少ないです。(逆に言えば、この本のおかげでそれらの路線が民有林鉄であったことが判明しました)

そしてもうひとつ、「東北を網羅していない」という意味では、福島県の林鉄を全く取り上げていない点も注意を要します。本書のもととなっている「土木台帳」は、秋田営林局と青森営林局(つまりそれらが統合して出来た東北森林管理局)所蔵のものであり、往時前橋営林局の所管であった(今は関東森林管理局管内)福島県内の路線は収集の対象外なのです。タイトルだけだと勘違いするかも知れない部分ですね。

(ちなみにこれは余談ですが、私はこの本の内容とほぼ同じ「路線データ」を、去年の夏に秋田市の森林博物館で開催された「森林鉄道企画展」で見ました。あの企画展が本書刊行のきっかけとなったのではないかと思っています。そして、今年も来たる7月21日から同所で林鉄企画展が行われるそうなので、私もまた見に行ってみようと思っています。)


さて、本書の内容の大きな部分を占めるもうひとつは「地図」であります。
この地図は本書のために新たに作成されたというもので、「5万分の1地形図」をベースとした「現行の森林管理署管内図」に「赤線」で路線を書き入れたものです。5万図をベースとしているだけあって、各路線の再現性は抜群……と、言いたいところなのですが、本書の最大の功罪は、この地図が不完全なことにあると思います。

←この地図をご覧下さい。
これは先ほど引用した地図の一部を拡大したもので、具体的には秋田県藤里町にあった「藤琴森林鉄道黒石又支線」の終点附近の地図です。赤い線がこの本に記載されている路線のライン、そして青い線は先日の実踏調査で明らかになった実際の廃線跡のラインです。この違いをどう考えるかは人それぞれだと思いますが、少なくともこの地図のラインが路線の線形を正確に表現していないことはお分かりいただけるでしょう。

もちろん、私は記載されている全ての路線を探索したわけではないですし、正しく記載されている部分も多分にある(特に市街地に近い部分は正確性が高い)のですが、それでも肝心の山奥の路線図はかなり大雑把に見えます。仮に路線名が「A沢線」だとすれば、地形図にある「A沢」の水線に沿って「路線データ」にある長さの分だけ線を引いた…という感じの正確さと言えば分かり良いでしょうか。なので、橋の位置はもちろん、沢の右岸左岸のどちらを通っていたか、沢底からどのくらい高い所を通っていたかというようなことは、本書の地図からはほとんど把握出来ないですし、この地図を鵜呑みにして探索を行うのは危険だとさえ言えます。この点についてはがっかりしたと同時に、我々の最大の楽しみが奪われなかったという安心もありました(笑)。
例えば過去に『山行が』で取り上げた「定義森林鉄道」などの地図を比較してもらえば、残念ながら本書の地図が不正確であることが分かると思います。

地図に関して本書の前書きには、「森林鉄道の一覧表が出来れば、その路線が具体的にどこを走っていたかを特定する必要があるし、その情報が最もニーズがあるはずである」としていて、我々のような探索を行う人間にとって非常にニーズの大きい地図の完備に力を入れたことが分かります。しかし、あくまでも元データの「林道台帳」に記載されているのは「距離」「起点」「終点」などの文字情報が主であって、詳細な図面は完備されていなかったそうです。そのために膨大な全路線の正確な地図を用意することはそもそも不可能だったのでしょう。その事は制作側も当然把握しており、前書きには「図面が保存されていない場合は(中略)昭和30年代の旧営林署管内図、経営計画図に記された軌道図、延長、さらにはインターネット上に記載されている廃線跡の踏査記録などを参考にして路線を再現した」「しかし、全路線について確実に再現出来た訳ではない。旧岩手営林署の管内図が存在していないことから(後略)」のように、不備を認めています。

そうであるならば、路線ごとに「このラインはどの資料から再現したか」ということを、色分けなどの方法で表示して貰えた方が、良かったと思います。既に当サイト宛にも何件か「『全データ』と『山行が』の地図で路線の位置が違う」という問い合わせが来ており、「正確な地形図の上に大雑把なラインを描く」ことの罪深さを感じているところです。

という具合に、掲載されている地図の正確さには若干の不満がありますが、それでも沢筋自体がまるっきり間違っているような大ミスは今のところ見つかっておらず、「どこの沢に支線があったか」を把握するには十分です。特に規模の小さな支線については、記載の地図を見たことで初めて「B沢線はここにあったのか」と気付いたような例がいくつもあります。したがって使い方を誤らなければ、十分に探索の役に立ちましょう。


この本の主な内容である「路線データ」と「地図」についてそれぞれ感想を述べましたが、本書の内容はまだまだ他にも沢山あります。管内林鉄の盛衰に関する総論、台帳などの整備状況についての調査結果、「変わりダネ路線物語」と題された10本の面白いストーリー(「七影隧道」のエピソードも)、150枚を超える往時の林鉄風景(ただし網羅的ではなく、特定の路線が大半を占める)などが盛り上げてくれます。

もっとも、本書はあくまでも路線データに特化しているので、線路構造や車両についてなどはほとんど触れていませんから、「林鉄入門書」にはなりにくいと思います。また、このタイトルだと勘違いされる人はいないと思いますが、各路線の「現状」についての言及も全くありませんので、そういう情報をお求めの場合は当サイトなどの現地レポートであるとか、『日本の廃道 第75号』収録の『秋田林鉄名橋列伝 2012』をオススメします!(←宣伝乙!)


かつて東北(秋田・青森・岩手・山形・宮城)の林鉄は、どこに、どのくらいあったのか。

このような極めて基本的なデータさえ、従来は容易に入手することが出来なかったわけですが、本書の刊行はそれを可能にしてくれました。私もこれから大いに活用していきたいと思います。




長文をお読みいただき、ありがとうございました。

| いろいろの話題 | 15:11 | comments(1) | trackbacks(0) | pookmark |
コメント
ニセモフしないように気を付けようぜ!
| tyaffic | 2012/07/18 5:59 PM |
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